旅先で出会った暮らしに魅せられて渡伊を決意
会社員時代に旅したシチリア島で偶然出会った一家の、シンプルながらも悦びに満ちあふれたライフスタイルに感銘を受け、たびたび彼らを訪問するように。 その交流が原体験となり、イタリアの多様性や地域文化の豊かさ、食文化に根付いた強い愛郷心に関心を抱くようになりました。 世界唯一のガストロノミーの教育機関「食科学大学」を見つけたことにも必然のような運命を感じ、会社を辞めて大学院留学することを決めたのです。 大学院は多国籍な学生が集まり、授業は英語で行われます。 渡伊前に数年間イタリア語を学んだこともあり、せっかくのイタリアなのに英語圏の学生と共同生活をすることに、当初は不満を抱きました。
しかし、結果的に外国人からみたイタリアの良い点悪い点を共有でき、視野が広がりました。また卒業後、同じ志を抱く学友を世界中に持てたことは、私にとってかけがえのない財産となっています。
母校と日本の食文化をつなぐ教育事業に携わる仕事に
小さな村での暮らしは、都会生活に慣れた自分には刺激やプライバシーに欠け、最初の頃はストレスでした。 でも仲間と食卓を囲んで語り合ったり、地元のバールや商店の店員とおしゃべりしたりとモノ消費なしでも得られる豊かな時間を経験するうちに、これまでの価値観が大きく揺さぶられていくのを感じました。 インターン先のシチリアのワイナリーでは、シチリア人の寛容さや優しさ、柔軟さといった生きる力の強さに刺激を受けました。
またイタリアワインの最大の面白さでもある土着性に触れ、そこで感じた生産者の想いやストーリーをひとりでも多くの日本人に伝えたいという希望が芽生えたことから、帰国後はイタリアワインのマーケティングを行う仕事に就きました。 最近では、母校・食科学大学の日本での食文化研修旅行の企画運営や食文化教育事業も行っています。これからも、私がイタリアで発見、体感した「食文化を通じた平和な暮らし」を、世界中に広げていきたいです。