この分野の特徴
100年の伝統に支えられ、今なお革新をし続けるイタリアの教育学。
政財界からIT部門、芸術家まで、世界中で活躍する著名人を数多く輩出していることで知られるモンテッソーリ教育は、20世紀の初めにローマで、医者であり教育者であったマリア・モンテッソーリ氏が提唱しました。
それから約60年のち、子どもも親も先生もみな平等という考え方の下、子どもたちの個性と自主性を最大限に生かす幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」がイタリア北部レッジョ・エミリア市で生まれ、今世界中で注目を集めています。
モンテッソーリ教育とは?
大人が一方的に教えるのではなく、子どもたちが自発的に学び、発達できるよう、好ましい環境の中で導くという教育法は、マリア・モンテッソーリ氏の提唱後すぐに欧州およびアメリカでブームを巻き起こしました。それから100年以上たった今でもその手法は有効とされ、世界130以上の国で採用されています。
その哲学の基本は、「子どもには、自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」です。自由を保障し適切な環境を整えることで、子どもたちは自発的に学び、成長することができる。「自立し、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的としたモンテッソーリ教育は、欧米で広く普及しています。
日本には1960年代に上陸、以来、全国にモンテッソーリ教育を取り入れた幼稚園があります。中学2年生で最年少プロ昇格記録を達成した棋士の藤井聡太氏は、幼少時にモンテッソーリ教育を受けていたことでも注目を集めました。
日本では現在、教育の自由化が行われていないため、モンテッソーリ教育の導入は就学前の乳幼児までに限られていますが、欧米では、小学校から大学まで一貫した教育を提供している機関もあります。
グーグルの共同創立者セルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、ウィキペディアのジミー・ウェールズ氏、経営学者のピーター・ドラッガー氏、前米大統領のバラク・オバマ氏など、国際的に活躍する人材の多くがモンテッソーリ教育を受けてきたことが知られています。
レッジョ・エミリア・アプローチとは?
子どもは、発達する強い能力と、個人として権利を有する「人」であり、それは他者との関わりの中において獲得し、育っていくものだとする教育哲学です。この教育プロジェクトは、教育者で学校心理学者であるローリス・マラグッツィ氏が提唱し、1963年からレッジョ・エミリア市の幼稚園や保育園で実践されてきました。
特徴は、家族の参加、すべての人の協力、教育環境の重要性、「アトリエ」と「アトリエリスタ」の存在、園内キッチンの存在、教育、教育法の専門家との連携にあります。
子どもたちは「100のことば」を持って生まれます。アトリエ・スペースでは、子どもたちがいつでも、さまざまな材料、いろいろなことば、多様な視点に触れ、手と頭と感情を同時に働かせることで、子ども一人一人、あるいはグループの中で各々の、表現力や創造力を引き出します。
保育所では、各教室にそれぞれ2人保育士がいるほか、ペタゴジスタとよばれる教育学の専門家と、アトリエリスタとよばれる芸術専門家が配置されています。
マラグッツィ氏のアイディアは、レッジョ・エミリア市や多くの協力者により実現、実施されてきました。この教育哲学が、提唱者の名前でなく、「レッジョ・エミリア・アプローチ」とよばれているのも、このシステムの特徴といえます。