メッシーナ海峡を超えてシチリアへ

Sicily

数千年の歴史と文化

個性豊かな20の州と彩りあふれる「食」

歴史的に、大小さまざまな都市国家が競い合い切磋琢磨して個性豊かな文化を生み出してきました。

地中海文明の交差点として、さまざまな民族が足跡を残してきたシチリアは旅する価値がある島だ。せっかくシチリアに渡るのならば、レッジョ・ディ・カラブリアとメッシーナ間を、列車ごと積み込むフェリーに乗って出かけたい。

ローマ・テルミニ駅21時。こんな夜更けにテルミニ駅にいるのは、シチリア行きの夜行寝台インテルシティ・ノッテ(ICN)に乗るからだ。イタリア半島本土とシチリアの間に横たわるメッシーナ海峡を渡る時、車両を切り離してフェリーに積み込む、イタリア唯一の路線なのだ。夜行寝台というとクッチェッタと呼ばれるコンパートメント形式の乗り合い寝台もあるが、このICNは個室寝台エクセルシオールがあり、シャワーも完備で朝食サービスもある。ちなみに今回乗り込んだICNはその名も「山猫号 ガットパルド」として知られている。ルキノ・ヴィスコンティが描いたシチリア映画と同名なのだからシチリアに向けてテンションも上がる。
旅のハイライトは車両を切り離してフェリーに積み込むヴィッラ・サン・ジョヴァンニ駅だが、時刻は早朝の4時25分。そこから最短距離でわずか3kmのメッシーナ海峡を渡り、メッシーナ到着が6時10分。季節がよければ感動的な朝焼けの中シチリアに到着するという、一生忘れられない光景に出会えるはずだ。メッシーナに到着すると再び車両を接続し、シラクーサ方面とパレルモ方面の二手に分かれる。パレルモ行き車両はそのままシチリアの海岸線を一路西へと走る。
鉄道でシチリアへ渡る際、ハイライトとなるのはメッシーナ海峡を渡る際、車両を切り離してフェリーに積み込む一連の作業風景だ。イタリア本土とシチリアを結ぶ橋の建設計画が起こるたび、その存続が危ぶまれているが、いまもなお鉄道がフェリーに積み込まれて海を渡る世界唯一の路線である。
朝だというのに目もくらむ光はさすがシチリアならでは。ミラッツォ周辺からは天気が良ければストロンボリ島など、エオリエ諸島が見える。8時59分着のチェファルー駅では朝食のサービスがはじまり、車掌が熱々のエスプレッソを持ってきてくれた。10時05分終点のパレルモ中央駅着。ついに鉄道でシチリアまでやってきた。合計12時間8分、ホテルに荷物を置いて早速向かうのはパレルモの台所バッラロ市場。魚介類や野菜など、目も眩むようなシチリアの食材が旅人を待ち受けているのだ。
シチリアへ無事上陸を終えたら、メッシーナ駅で車両はシラクーサ方面行きとパレルモ方面行きに別れる。タオルミーナやカターニア、シラクーサに向かうなら前者。州都パレルモを目指すなら後者。パレルモ中央駅を出て旧市街を歩けばいかにもシチリアらしい市場が広がっている。

写真・文/池田匡克 Masakatsu Ikeda