語学留学の後、大学の正規コースへ
私はもともと東京芸術大学の大学院に在籍していて、博士論文のテーマは「17世紀のイタリア・オペラ」。その分野の第一人者であるボローニャ大学のロレンツォ・ビアンコーニ教授の指導を受けたいと思っていました。また、博士論文のための資料の収集は日本国内だけでは難しく、専門知識を高めるためにも、ボローニャ大学に留学することにしたのです。
専門的な学究をするわけですから、この留学の前にも何度か語学留学をし、会話レベルを高めてから渡伊しました。しかし、最初は授業についていくことだけで精いっぱい。専門の研究を進められないジレンマに陥ることもありましたが、次第にペースがつかめてきて、周りの友人のおかげもあり、無理せずやっていこうと思えるゆとりができてきました。
垣間見たイタリア人の本質が研究に弾み
勉学だけでなく現地での生活を知ろうとようやく思えるようになったのは、1年が過ぎたころ。
イタリア人とともにバカンスを過ごしたり、夏の音楽祭に出かけてオペラを見たり。季節の行事に参加し、地元の食べ物を味わう。本当の意味でイタリアでの生活を体験することができました。 研究分野がイタリア・オペラということもあり、総合芸術が生まれた豊かな文化を肌で体験できたことは大きな財産となりました。時代は変わっても、中世の面影を残す街並みや、近代的なものから古典的なものまで文化を享受するイタリアの人たちの本質は変わっていないのだと感じました。
当面の目標は博士論文の完成ですが、その後のビジョンに変化が生まれましたし、新たな可能性も見えた気がします。辛かったことも楽しかったことも、すべてを糧にして前にだけ進んでいこうという意思がさらに強くなりました。