「オペラを育てるのは観客」という本場の教え
声楽の勉強を始めた時から、「いつか本場のヨーロッパで」という漠然とした思いがありました。大学での勉強を経て惹かれるようになったのが、イタリア・オペラ。その言語感覚を身に付けるため、イタリア留学を決意しました。
現地では、授業中語られる先生方の話に大きな刺激を受けました。圧倒的な知識量の違い。そしてただ知っているだけでなく、演奏をする上での「生きた知恵」を肌で感じました。
オペラ鑑賞や自分自身も舞台に立つことで、日本と違う劇場の空気感が味わえたのも、歌い手として貴重な経験でした。私が留学したパルマには熱心な観客が多く、特に所縁の作曲家であるヴェルディのオペラに関しては「自分たちの耳が歌手を育てる」という意識を持っています。観客もまた、オペラを作る大事な要素なのだと強く感銘を受けました。
世界中にいる仲間の存在が大きな力に!
留学生活ではすべての局面でコミュニケーションが必要なので、以前より物怖じせずに自分の意見が言えるようになりました。今まで困難に感じていたこと、不向きだとあきらめていたことも、努力で変えられると実感。また、困難を一緒に乗り越えた各国の留学生と仲良くなり、世界中にオペラを愛する仲間ができたので、これからもがんばろうという気持ちが強まりました。
演出家の先生は、「オペラ歌手になるのは、オリンピック選手に選ばれるのと同じくらい困難なこと。一日10時間は勉強しなければいけないよ」とおっしゃっていました。オペラが生まれた国で、その文化に熱中する人たちの姿勢を目の当たりにし、オペラを継承していくことへの責任感が芽生えたことこそ、この留学で得た最大の収穫だと思います。