今、できることをアグリツーリズモ発祥の地に求めて
2011年、私が生まれ育った宮城県は東日本大震災で甚大な被害を受けました。その後、宮城県庁のインターンシップを通じて、農業と漁業の復興の進捗状況は他の分野に比べて遅く、また震災から4年半が経過しているにもかかわらず、外国人観光客が震災前の6割に留まっている現状を知りました。
その時、今の私が宮城県のために何ができるのかを考えました。そして、豊富な観光資源を利用し、結果として復興につなげられるアグリツーリズモに大きな関心を持ち、大学2年次のイタリアでの語学留学体験も活かして、トビタテ! 留学JAPANの留学プログラムでアグリツーリズモの発祥地イタリア・トスカーナ地方に留学することにしました。
ホテルの現場で「おもてなし」の喜びを実感
留学中は、フィレンツェの四つ星ホテルでレセプショニストとして4ヵ月間のインターンシップを行いました。ホテルの顔とみなされるレセプショニストは、自覚が必要で緊張感がありました。世界各地のお客様に多言語で対応しなければならず、私はイタリア語、英語、日本語で接しましたが、これには苦労しました。
インターンシップ中は通訳やメールの翻訳も行いました。「あなたがいてくれて良かった」というお客様の言葉にやりがいを感じ、海外滞在中の不安な気持ちがわかる自分だからこそ、役に立てただけでなく、安心感を提供できたことが喜びでした。
これらの経験を通して、自分のやりがいは「海外でイタリア語とそこで得た経験を活かして日本人の役に立つこと」なのだと気付きました。
今、そしてこれから
イタリアで再発見した日本の「おもてなし」
自分から動けばチャンスは広がることを実感。実践活動は留学計画になかったアグリツーリズモでの通訳ボランティアやトスカーナ州政府観光局でのインタビューにまで広がりました。周りの人たちのおかげもあって活動の幅を広げることができ、人との出会いや繋がりを大切にするようになりました。
イタリアの「おもてなし」を学ぶことで、むしろ日本の魅力を再発見できました。日本特有の相手の気持ちを察する尊敬、謙譲の文化は、日本でしか味わうことのできない「おもてなし」だと考えるようになりました。
観光分野でイタリアと日本の架け橋になりたい
帰国後は、トビタテとイタリア留学の魅力を伝えるために、大学で2度の留学報告会を行いました。今後は、地域団体の観光塾やワイナリーでの講演や報告会を通してアグリツーリズモの知識や自分の経験を発信したいと考えています。
また、2020年のオリンピックでは、宮城県はイタリアのホストシティなので、東京や京都などの主要観光地だけでなくアグリツーリズモという新しい観光のスタイルで宮城県への観光客誘致を図りたいと思います。将来は、イタリアで得たネットワークを利用して、日本だけでなくイタリアの観光分野においても活躍し、交流促進の架け橋となることを望んでいます。