この分野の特徴
レオナルド・ダ・ヴィンチは15世紀末、鳥のように翼を羽ばたかせて飛ぶ飛行機の原案を描いていました。自然や動物、人間を徹底的に観察し、ほかにも無数の機の設計図や、アイディアを残したダ・ヴィンチは、ルネサンスを代表する芸術家であるだけでなく、多才な科学者でもありました。
その歴史を引き継ぐように、イタリアの製造業は確固たる自信の上に立っています。自動車、バイクからヨット、航空機まで、イタリアの工業製品は、物作りの伝統と意匠へのこだわりから生まれます。
例えば、大型豪華ヨット製造では、世界の市場で不動のトップを誇ります。市場の約4割を占めるこの部門は、高い技術力とデザイン力の結晶であり、まさにイタリアが得意とするところです。
宇宙工学分野では、イタリアは1975年の欧州宇宙機関(ESA)設立時からのメンバーであり、ヨーロッパの中でもリーダー的存在です。開発、研究、構想から製造まで、各部門で重要な役割を果たしてきました。日本のほか、アメリカ、ロシア、中国など国際協力も積極的に進めています。
最先端工学部門は、大学レベルでも国境を越えた提携や共同研究が多いのも特徴です。英語で学べるコースも豊富で、総合大学のほか、工科大学でも学べます。
このコースに注目!
Automation Engineering
日常のさまざまなシーンの自動化を図る技術、オートメーション・エンジニアリングについて学ぶ。
Aerospace Engineering
航空宇宙に関わる、基礎工学から産業工学までを学び、開発センターの専門家をめざす。
Biomedical Engineering
生体電子工学、生理学、さらに医療機器やデータ処理などを学ぶ。研究職を続けるほか、医療機器メーカー等へ就職する卒業生も多い。
Naval Engineering/Yacht Design
イタリアならではの船舶工学。ヨットなど船舶の設計のプロをめざす。
Environmental Engineering / Sustainable Building Engineering
地球レベルから身近な生活まで、人類を取り囲むさまざまな環境を学ぶ環境工学や、持続可能な建築に特化したコースも。
産業をリードする工学
- 「メイド・イン・イタリー」は、ファッションやデザイン分野だけではありません。機械製造もイタリアの得意とする分野のひとつです。イタリアは、機械輸出部門で世界第4位*。過去20年間における国際的経済危機や、新興国台頭の中で、安定した輸出額を保っています。
- フィアットのお膝元、トリノにある自動車博物館のほか、フェラーリやドゥカティ、カプローニなど各社の博物館も充実しています。歴史的遺産に直接ふれて刺激を受ける、イタリアの魅力はここでも同じです。
ボローニャのモーターショー、ジェノヴァの船舶ショーをはじめ、世界中から関係者の集まる見本市が1年を通して各地で開催されています。国際的なイベントにもアクセスが容易です。 - ロボットの輸出額は、日本、ドイツに次いでイタリアが世界第3位*。韓国や中国、米国など競合を抑え健闘しています。その強みの源は、官民一体の研究、生産体制です。
- 国際レベルでイタリアが急成長を遂げている部門に、建設業があります。国内需要が伸び悩む中、イタリアの企業は国境を越えて市場を開拓してきました。国外ビジネスは2004年から13年連続増加、平9.3%の伸びを見せ、2017年には174億ユーロに達して、その対象は92ヵ国、811件に及びます*。
宇宙工学
- ASI(イタリア宇宙機関)は、イタリアの宇宙活動の促進、実施のために1988年に設立されました。これは大学技術研究省の監督下にあり、宇宙工学分野の開発、研究は、各大学との連携の下に進められています。ASIはローマ本部のほか、イタリア南部、洞窟住宅群で知られるマテーラに宇宙測地センター、またシチリア島東端の町トラーパニに成層圏気象観測気球基地があります。
- ESA(欧州宇宙機関)の持つヴェガ・ロケットは、イタリアASIが開発しました。機体やロケット・エンジンの製造はイタリアのアヴィオ株式会社が担っています。
- イタリアはヨーロッパの中でもいち早く宇宙工学研究に取り組んできました。1959年にイタリアの物理学者エドアルド・アマルディ氏が欧州における共同開発を提案、現在のESA設立へ向けた大きな第一歩となりました。
- 「レオナルド」、「ラファエロ」、「ドナテッロ」。スペースシャトルのミッションで、宇宙ステーションに積荷を受け渡す役割を担うMPLM(多目的補給モジュール)は、イタリアのASIが開発、建造しています。代々、イタリアが誇る芸術家の名前がつけられているのは、そのためです。
- イタリアで初めて実用航空機を製造したジャンニ・カプローニ氏は、宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」で、日本の技術者・堀越二郎の夢の中に登場します。これはカプローニの人と仕事に惚れ込んだ宮崎監督によるオマージュであることを、監督自身が明かしています。さらに、「ジブリ」の社名はもともと、カプローニ社が製造した飛行機の名前に由来しています。